「CM業務の責任」
関根: CM業務には、デザイン業務を監視するデザイン監修があり、設計監修と呼ばれていますが、業務はかなり曖昧です。何が曖昧かというと、設計者のような法律的な責任が無いのです。ですから私たちは「これが良いのでは」と言って決めたときに、CM会社に責任があるのかというと曖昧です。それは、施主が判断したことになるか、設計者がそれを受けて設計者の責任で設計変更をしたということにはなるのです。ですからCM会社に「あれをお前らが言ったから仕事はこうなった」、「こっちに流れが大きく変わったのだ」と言っても責任がないんですよね。責任がないというのは本当にいいのかどうか。そこがCMというものの危うさなのかなと思っています。
桑野:工事監理もある意味CM業務の一つだというふうに考えられるわけですけど、工事監理者というのは法的な意味での立ち位置があるわけです。監理者というか法的責任者というのかな。法的に責任を求められる立ち位置なのだろうと思います。最終的には、設計者にいくような話でも設計にある意味セカンドオピニオンを言ったドクターの責任がどうかというふうな話と同じようなことだと思います。だから全く責任はないということには繋がらないのだろうなということです。非常に曖昧ですよね。そこら辺が施主から見てどういう責任を担ってくれるの?と曖昧に見えるかもしれないなと思いました。
関根:今回のCンターの契約の中には、施主の監督職員と同等の立場で、業務に係る「アドバイザリー業務、及び発注者支援」を行うことが契約書に載っていますので、施主の一部という形で施主として判断したことだから、施主の責任の一部をアルキメディカが受けていたということはあるとは思います。CM業務はかなり広い意味で捉えられるものですから、じゃあCMって何?という疑問に対しては、法的な責任もしっかりした定義も実はないのかもしれないと思っています。もっとしっかりした責任が必要になるのではないかという部分はあります。
ある市庁舎建替えの時に設計事務所がCMとして設計監修という立場で参画したのですが、大手ゼネコンが設計施工で行うものに対して設計監修では発言力がなさすぎるということで、設計事務所は第三者監理という形で業務を受け、監理ならば責任が発生するということで業務見直しをされたと聞きました。それはCM業務に責任を持たせたことになったと思うのです。このことは、今後のCMの責任の取り方のひとつの流れになってくるのかなと思います。
「CM業務のあるべき姿」
桑野:CMは業務の前の段階で支援という形で関われる。そういう意味で設計全体施工まで含めて見てくれる人がいるというのは施主にとってはありがたい存在ではあると思うんです。
関根:実は業務完了後少し経って、Cセンターから電話がありまして、将来計画についてアルキメディカで以前、基本設計の時に作ってくれた資料を検討の材料にしたいとのことでした。基本設計の段階では新棟を建てることだけに追われていたのですが、このセンターには20棟近い大小含めて建物があるので、それをどの様に増改築しながら運用していくか、マスタープランを決めていかないと将来が見えないのです。
設定を50年先まで考えてやるべきじゃないですか?という話をしました。将来を見据えた計画をするときに役に立つというのは、CMのあるべき姿の一つかなというふうに思いました。
桑野:その話はとてもうれしいですね。あの時社内で将来構想をある程度もう一度見直した上で今やろうとしていることを整理すると、設計の大変更だって今回の工事だけで収まるわけじゃなくて引き続き将来構想に大きく影響していく可能性のある部分ですから、将来構想を見据えた上で今の免震構造の採用だとかそういったものも整理していかないといけない。それで、逆に言えばあの空間をどう利用するかっていうだけじゃなくてエネルギールートですね。そういったものをどういうふうにこう配置していくかとかですね、インフラに関わるような大きな枠組みをその時点で考えたという実績を僕は大きいと思います。それを今ようやくもう一度取り上げていただくというか気がついた人がいらっしゃるということが、うれしいですね。
僕らが、ほかのCM業者と違うところはそこだと思います。本来、将来も含めての大きな枠組みをプロジェクトのごく早い段階から全体像を整理し直す、見直す、あるいは全体像を描き直す、新しく作り直す、そんなことを一旦やるということが、我々の業務の中で極めて重要な部分だろうと思います。
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